上白糖、大盛りで

特に益はないです

小説のようなものをとりあえず書いてみるためのハウツー

 お久しぶりです。今回はハウツーっぽい記事です。

1. 趣旨

 部活の新勧として、小説体験講座的なサムシングをやりたいなあとぼんやり考えているのですが、未経験者に紙とペンを渡してその場で小説を書かせるのはさすがにハードルが高いので、穏当な方法を模索中です。とりあえず穏当な方法の一案として小説のようなものを手軽に出力するハウツーを思いついたので紹介します。(※本記事はいわゆる『小説の書き方講座』とは毛色が異なるので、そういうのがほしい方は各自ググってください。また「本記事で紹介している方法が小説を書く最良の方法である」といった主張をする気も全くないです)

2. 未経験者向けの前置き

 「まだ小説を書いたことはないけれど一度小説を書いてみたい」という方に質問です。小説について、以下のような考えをお持ちではありませんか。

  • 小説には高度な表現力が駆使されなければならない
  • 小説には知的要素がふんだんに含まれていなければならない
  • 小説は文学的価値を備えていなければならない
  • 小説は直接的にせよ間接的にせよ現実社会に対して問題提起を行わなければならない
  • 小説には作者の個人的ないし哲学的な問題が盛り込まれていなければならない

 読み飛ばさなかった方は、今挙げた考えが全て義務形で述べられていることに気づいたことでしょう。もし上のいずれかの考え、あるいは同様の信条をお持ちの方がいればまず「そんな義務など無い」ということを強くお伝えしたいと思います。

 小説を書くことはとても簡単で気楽なものです。表現がどうとかプロットがどうとかウケがどうとか、しちめんどくさいことを考え出せば困難度や苦行度が増していきますが、本来、小説を書くことはとても易しく自由なものです。というのも、出来事を文字で書き連ねれば大体小説になるからです。文学性とか哲学とかは趣味の問題です。必須要素ではありません。

 まずは小説を書くこと、物語を綴ることそのものを楽しみましょう。楽器の演奏なども、いきなり高度な曲に取り組むよりまず音を鳴らすこと自体の楽しさを覚えるほうがとっつきやすいと思われます。それと同じことです。始めから『高度な小説』を書こうとすることは、よほどの意思や動機がない限り挫折の元になります。

3. 必要物

 御託はほどほどにして本編に移りましょう。必要な物は以下の通りです。

  • 大量の裏紙(サイズ:A4やB5を四つ折りにした程度。広々作業したいなら、もう少し大きいほうがいいかも。枚数:30枚~50枚くらい)
  • 筆記用具
  • テキストエディタ付きのPC、もしくは紙のノート
  • ある程度ゆとりのある作業スペース
  • ある程度まとまった作業時間 (3h前後)

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紙と筆記用具

 紙を調子に乗って100枚用意しましたが、どう考えてもこんなには要りませんでした。ノリでやるには50枚ぐらいが上限な気がする。裏紙はぶっちゃけテキストエディタで代用できますが、アナログに作業するほうが工作感があるのでモチベーションを保ちやすいと思われます。

4. 手順

4.1 準備

 まず、小説のようなもの生成エンジンを作成します。これができればこのハウツーの半分が達成されるといっても過言ではありません。たぶん。(個人差があります)

 まず裏紙1枚目の中心に大きく「過去」と書きます。

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「過去」の紙

 次に裏紙2枚目の中心に大きく「出来事」と書きます。

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「出来事」の紙

 次に裏紙3枚目の中心に大きく「リアクション」と書きましょう。

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「リアクション」の紙

 書き終わったら写真のように並べます。奥から「過去」「出来事」「リアクション」の順ですね。

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小説のようなもの生成エンジン

 以上で、小説のようなもの生成エンジンの完成です。おめでとうございます (拍手) 。

 準備を続けましょう。裏紙4枚目の隅に「設定」と書きます。

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「設定」の紙

 その後、任意の人や物を最低2つ「設定」の紙に書き加えます

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「設定」の紙に任意の人や物を書き加える

 今回は『木』『男』と書いてみました。書き終えたら、追記しやすい位置に置きます。これで準備は完了です。

4.2 書く

 では、小説のようなものを書き始めましょう。

 まず、新しい裏紙 (No. 1) を手元に用意します。次に、「設定」の紙を眺めて任意の事象を思いつきます。思いついたら、それを裏紙 (No. 1) に記します。このとき、隅に番号を振っておくと後の作業が楽になります。

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裏紙 No. 1 あるいはビッグバン

 記し終えたら、裏紙 (No. 1) を「出来事」の隣に置きます

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最初の「出来事」を配置する

 新しく登場した人やアイテムは「設定」の紙に記しておきます。ここでは『リンゴ』を書き加えました。これは以降の作業でも同様です。

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「設定」の紙に『リンゴ』を書き加える

 勢いはそのままに、新しい裏紙 (No. 2) を用意します。「出来事」の横に置いた裏紙 (No. 1) を眺めて「出来事」を見聞きした人が次に取る行動、あるいは「出来事」の次に起こる事象を何でもいいので思いつきます。思いついたら、それを裏紙 (No. 2) に記します。番号振りを忘れないように。

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裏紙 No. 2 あるいは「出来事」に対する「リアクション」

 記し終えたら、裏紙 (No. 2) を「リアクション」の隣に置きます

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「リアクション」を配置する

 手作りゲーム感。次に「出来事」、「リアクション」の隣の紙を写真のようにずらします。「出来事」の横にあった紙が「過去」の横に、「リアクション」の横にあった紙が「出来事」の横にくる配置ですね。

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「出来事」は「過去」に。「リアクション」は「出来事」に。

 このとき「過去」の横にくる紙は裏返しに置きましょう。この節 (4.2) の作業中は二度と読み返しません。本ハウツーにおいては過去を振り返らない姿勢が大事なのです。(振り返ると作業時間が爆増するため)

 では、新しい裏紙 (No. 3) を用意しましょう。「出来事」の横に置いた裏紙 (No. 2) を眺めて「出来事」を見聞きした人が次に取る行動、あるいは「出来事」の次に起こる事象を何でも......はい。お察しのように、以降紙が尽きるかキリがつくまで「リアクション」を書いて置いてずらす動作を繰り返します。コツは深く考えないようにすることと、迷ったら 2. 未経験者向けの前置き を再読することです。音楽を聞いたりテレビを見たりしながらサクサク進めましょう。何人かで集まってできるなら、雑談しながら進めるのも1つの手だと思います。

 今回は No. 50 まで繰り返しました。

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No. 50 を書き終えた図。途中から話の制御がつかなくなっても気にしない

 中身はこんな感じです。

 1. 木からリンゴが落ちる
 2. 男がすごい発見をする
 3. 男が発見を言いふらす
 4. やばい組織が男を捕まえようとする
 11. 男が警察にピーナッツバターを叩きつける
 19. 男がアボカドスムージー職人になる
 25. 男がアボカドの仕入れ先を失う
 26. 男がタコススムージー屋を始める
 27. タコススムージー屋がつぶれる
 33. やばい組織のリーダーが男を捕まえる
 37. やばい組織の幹部が男に事情を説明する
 47. メキシコに平和が訪れる
 49. 男がサルサスムージー屋を開く
 50. サルサスムージー屋がそこそこ繁盛する Fin.

 コツは深く考えないようにすることです (2度目) 。勢いを大事にしましょう。以上で小説らしきものがほぼ完成しました。

4.3 清書

 仕上げとして、テキストエディタか紙のノートに清書をします。紙束の中身を番号順にさっと書き下しましょう。文字数が多くなりすぎるなら途中で切り上げても構いません (1000字もあれば体験としては十分じゃないでしょうか)。お好みで文末を過去形にしてみたり、間にテキストを追加してみたり、登場人物に名前を付けてみたりすると小説っぽさが増しますが、時間がかかる部分は端折りましょう。推敲? 気分で......。

4.4 完成

 清書が終われば、小説のようなものの完成です。わー! (大拍手) テキストエディタで清書した場合は、できた文章を紙に印刷すると雰囲気が増して良好だと思われます。以上で本ハウツーは終了です。おつかれさまです。ありがとうございました。

5. 後記

 ネットで初心者向けの小説講座を検索すると、プロットの作り込み方や文章作法の紹介、表現テクニックの解説などを行っているページがたくさん見つかります。確かにより高度な小説、より洗練された小説を出力するためにはそうした小説講座的な知識を持っているのに越したことはないと思います。思いはしますが、私個人としては「初手から出力の質を気にしてもなあ」という感のほうが強いです。8000字くらいの話でも真面目にプロットから作り込むとすごく時間かかりますし。高度なものを作ろうとぐずぐずするよりは、簡単なところから体験を積んで感想や反省を得ていくほうが手っ取り早いのではないかと思います。

 まあ所詮、趣味で数千字/1シーズン書いている人間の所感です。各々自説を深めていきましょう。お付き合いいただきありがとうございました。

 

追記:本ハウツーによってできた小説のようなものです。眠いので No. 12 あたりで切り上げました。おやすみなさい。

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